建前では笑っているが、汗もかき息も辛そうだ。



もう!しょうがないなっ!




「ちょっと。あのっ!」



「なに!」



りんの声で鬼の形相の女子たちが振り向く。




「病人の前で、ほこりが立つようなことしないで下さい」



翔斗の側まで行くと、




「今から体温を測るので、静かにしていて下さい。

それから!体温を測り終わるまでここから入らないで下さい」



そう言ってカーテンを閉める。



ごちゃごちゃ言っている女子たちを尻目に翔斗に小さな声で喋りかける。




「あの、これ」



「あっ、ピン留め」



「はい」



翔斗にイチゴのピン留めを返す。




「それから、ここから出ましょう」



「ん?どうやって」



「あそこです」



翔斗の上にある小窓を指差す。




「あそこ?イケるか?」



「多分、大丈夫です」



「ったく。しょうがねぇな」



「しょうがねぇなって…あなたのために言ってんですよ」



「俺が好きだからか?」



重い腰を上げた翔斗はからかうように言う。




「えっ……………」



"好き"?"好き"なのか?
ていうかどうしてこんな奴助けてるんだっけ?




「おい。行くぞ」