「別にいーよ。」


「あーあ…もう少し家が遠かったらなぁ」


「俺に歩かせるつもりか(笑)」


「フフッ、バレたか」


「ふざけんな(笑)」


「じゃーな」と手を振り帰る松村さん。


…待って。


もう少し…もう少しだけ…


話してたい…!


「待って!!」


「え?」と振り返る松村さん。


あ…どうしよう、まただ…


また…


「次はプロポーズか?(笑)」


「いや、そういうのは男の松村さんから言うことでしょ!」


「まーな」


そして沈黙。


…ちがーう…


何か…何か話したい…。


こうやっていざ話そう!っていう時に開かないこの口大嫌い…!


「あのさ、」


「何?」


「俺ら…付き合ったんだし、苗字呼び止めねぇ?」


「えっ!い、いいの…?」


「全然?じゃ、俺は……あ、かりって呼ぶし…」


自分で言ったくせにカァッと赤くなる松村さん。


…いや、


「自分で言ったのにあかくならにでよ、…く、空汰…」


とか言って私まで赤くなる。


変なの。下で呼び合っているだけなのに…


なのに…


「亜華里…だって赤いだろ!
…って恥ずいな、コレ」


「う、うん…呼びとめてごめん」


「いいって。…下の名前で呼び合うようになったし…。
じゃあ、明日な!あ、亜華里…!」


そうして最後まで真っ赤な顔で、


帰って行った。