純情ラバーズ






電柱に背中を預けて「はやくはやく……」とつぶやいていると、抑揚のない声が聞こえてハッとした。


勢いよくそちらに顔を向けたせいで、ひとつ結びにしていた髪が電柱に当たる。



「な、なななんで氷野くんが……!」


「あんた不審者みたいだから」


「うっ!」



不審者扱い……。


でもそんなもんだ、電柱に隠れてこそこそしてるなんて不審者しかいない。 むしろストーカーみたい……。



「帰んないの?」


「帰りますけど、その」


「じゃあ行こ。 どーせ同じとこだし」



あごでくいっとうながすと、氷野くんは先に歩いていってしまう。


い、一方的だ……。