離れると、氷野くんはふっとからかうような笑みを見せた。



"かわいい"やキスはくれるのに、肝心の言葉はくれないの?


貪欲になる自分がいることがわかっても、とめられなかった。



「氷野くん、好きです」


「っ、……!」


「氷野くんは……?」



勇気を出してわたしから近づくと、思いっきり顔を背けられた。


でも、その横顔はわたしの何倍もまっかに見えて。



それだけでもう、十分か。


氷野くんが好きで、カレがわたしの想いに応えてくれるなら、なんだっていい。



って、思って離れたのに、その直後。


不器用につむがれた言葉に、わたしはカウンターをくらった気持ちになった。



「……好き、だ」