ありちゃんは教室に入ったのに、わたしは廊下で直立不動になっていた。
かっこいい。
スパンと心を射抜かれた。
借りたものなのか、まっ黒なスーツに身を包み、グレーのネクタイをしている。
ふわふわとした黒髪は、ワックスできれいに整えられていて、おまけにメガネをかけているときた。
「ひ、氷野くん、その、メガネは」
思わずカタコトになるわたしに、氷野くんは「ああ」とうなずいてメガネに触れる。
メガネをとると、それをもてあそびながら口を開いた。
「朝集合はやくて、メガネしていったら、このままやってって言われてさ」