「……え?」 氷野くんの聞き返す声に、わたしはハッと我に返った。 わたし、今なんて言った? "好き" 伝えるはずのなかった気持ちが、わたしの口から飛びだした。 「もも、今なんて……」 そう言う氷野くんの表情は、わからない。 「な、なんでもない! ってか、聞こえてないよね! うん、だから忘れて!」 氷野くんと目を合わせて話したい、なんて思っていた自分はどこへやら。 目線は、氷野くんのネクタイあたりにしか向けられなくて。 「……おい!」 氷野くんの声を無視して、一目散に走って帰った。