「風邪引く気? ほら、ちゃんと持って」
わたしのドキドキになんて1ミリも気づかないで、カサの持ち方を注意してくる。
梅雨の季節がやってきて、はじめて知ったことがある。
それは、氷野くんが心配性なこと。
「も、持ちます! 持ちますから! だから離れてくださいっ……」
「んー」
かなりの温度差がある。 わたし、テンパりすぎだ……。
カサをしっかり持ち直して、ふう、と息をつく。
八高へ続く一本道。 そろそろ、八高生が増えてきた。
びしびしと視線を感じるのは、きっと気のせいじゃない。
「ふわあ……」
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