わたしの背中は完全にドアについて、目の前には不機嫌そうな氷野くん。
なにこの体勢ーー!?
「えと、逃げようとなんてしてないです、からっ」
「敬語になってるよ。 ももほんとわかりやすいね」
こんなイジワルな氷野くん知らない!
距離が近すぎて、ドキドキしすぎて、くらくらする……。
「あー! 夜ごはん作らなきゃ! 帰る!」
その場にかがんで氷野くんの腕から逃げると、壊しそうな勢いでカギを開ける。
氷野くんがドアから離れたことを確認してすぐさま家に入る。
「ちょ、もも! 夜ごはんって……」
氷野くんの焦ったような声が聞こえたけど今のわたしには余裕がない。