行き場のなくなったこの気持ちをまだしばらくは抱えるハメになる。

 だけど、紛れもなく、これはあたしの一部なんだと思えた。

 あの人に焦がれた。

 あの笑顔が欲しい、と痛烈に思った。

 それも、全部あたしなんだって。


 秋が深まりつつある高い空を見上げる。


 この空の下で。まさに今、この空の下で。

 想いが叶ったり、ダメだったり、笑ったり泣いたりしている人たちがいる。

 誰かに憧れて、その人の手を握れる人たちも、背中を見る人たちも。

 あたしは泣き組みだったけど。いつか、あたしだって。

 抱いた恋心を100%にして、誰かの隣で笑える日が来るはずだ。

 絶対、絶対、くるはずなんだ。

 だから今は――――――――

 あと少しだけ、泣いてみよう。


 そしてあたしはまた、誰かのために新しいマスカラを買いに行くんだ。睫毛を3ミリ伸ばして、大切な誰かに微笑むんだ。

 そんなことを思いながら、大学の構内を走り抜けていった。




 生まれた恋心の10%


 足りない恋心の90%。



 いつだって、人は皆、誰かに焦がれる。






 「10%」完。