閉館のチャイムが鳴ったのを確認して、彼があたしを見る。
「水族館を気に入ってくれてありがとう。気をつけて帰ってください」
あたしはキュンとなって、一瞬息が止まる。
「・・・・まだ・・・」
「え?」
彼から目が離せない。薄暗い館内で、その笑顔だけは見ていたいと痛烈に感じた。
「・・・・まだ、あたしの希望は10%ですか?」
彼はふ、と息をはいて、困ったように微笑した。
「・・・・好いてくれてるのは、有難いと思ってるんだ。でも・・・」
「でも?」
すっと視線を外して、彼が呟いた。
「・・・・・やっぱり、歳の離れた妹みたいにしか思えないんだ」
あたしは黙った。
悲しさを感じれない。
それほど、見ているのが綺麗な光景だと思った。
全てのものが青く浮かび上がる世界で、目の前に立つ彼が。
「・・・・・・・まだ、諦めません」
それだけを行って、出口に向かった。
出口の警備員に会釈をして、海への道に出る。
夏の夕暮れ、水族館の前の浜辺はほどほどに人がいて、みんな夕焼けに赤く染まっていた。
波の音を聞いて立ちすくむ。
あたしの10%、これ以上は進まないんだろうか・・・。



