あたしは雅のアドバイス通りに水族館の年間パスを買う。

 2回入れば元を取れるべらぼうにお得な年間パスだった(3000円だぜ、3000円!)

 それであたしは水族館に通った。友達とも、サークルでも、一人でも。とにかくあたしを覚えて貰う為に、入口のお姉さんや売店の人たちと談笑できるくらいには通い詰めたのだ。

 イルカのショーは必ず行って、手を振ったり話かけたりでアピールも忘れなかった。

 彼は迷惑がらずにいつでもキチンと相手をしてくれた。礼儀正しすぎて、それはそれであたしは凹んだけど。

 彼の名前が井上遼であることも判ったし、水族館で一番美味しいのが北入口の側のホットドックであることも判った。

 大学から、あたしのアルバイト先であるかのように毎日通ったけど、彼に毎回会えるわけではないから一人で水族館をうろついていた。

 人気のなくなった平日の閉館前はお勧めだ。

 暗闇の中にぼんやりと青く水槽が浮かび上がり、空気を出すぽこぽこという音だけがこだまする。

 あたしは一人でその青さに包まれて、目の前で美しい魚が泳いでいく。

 床にペタンと座り込んで、くらげの水槽をじっと見ていた。

 白い体が水中をゆったりと舞う。

 その光景に目を奪われた。

 グロテスクな魚でさえも、美しく光って、あたしを幻想の世界へと連れて行く。

 閉館の音楽が流れるまでずっと深海のコーナーを楽しんでいたこともあった。

 通いだして2カ月頃、今日は水族館の入口入ってちょっと進んだ海水魚のところで、カクレクマノミをじっと見ていた。