私、夏川 ゆかりは今土手にいた。
なんとなくそれなりにきれいな川を眺めながらメールをみる。 受信ボックスには1件も新着のメールはなかった。

私が同じクラスの柳瀬 亮からの告白をOKしてから、今日で丸2週間。 柳瀬は変わり者で、いつもぼーっとして虚空を見つめてるやつだった。ついでに容姿は人並み。でも、話すときは相手の目をしっかり見てるとこと、シャンプーのCM に使えそうなサラサラでキラキラしている髪は嫌いじゃない。

しかし、今日で丸2週間も経ったというのに、デートはおろか、学校ですらあまり話さないとはどういうことだ ろうか? 告白されたときにメアドと携帯番号は交換した。しか し、1、2回ほどしかメールが来た覚えがない。 さすがに付き合っているのかどうか、わからなくなる。 ついでに、私が柳瀬を好きなのかということもよくわからない。初めての告白に舞い上がってOKしたが、(嫌いなワケではなかったし…)これって、かなり相手に失礼なんじゃないかと思う。

…柳瀬はなんで私のことが好きになったんだろうか?容姿に関しては、自分でいうのはなんだが多少は人並み以上ではあると思う。しかしつり目で、話しかけられると緊張で無意識に睨んでしまう。性格は…普通か。上がり症というのはあるが、その他は普通。普通代表になれるくらい普通。まぁ、つり目のせいで友達は居ないんだけ ど…。

どれだけ考えても、この「どうして柳瀬が私を好きになったか」ということだけはわからなかった。

ふと頬に冷たいものが当たった。雨が降って来たようだ。空は一面真っ黒で、止む気配はない。運悪く、今日は折り畳み傘は学校に置いてきてしまった。走って帰ろう。

家に向かって走っている間にも、雨は激しさを増していく。まだ少ししか走っていないのに、もう全身びしょ濡 れだ。 ふと近くの公園に丁度雨宿り出来そうな所があるのを思 い出す。私はその公園まで走ることにした。

約3分後。 私は公園に着いた。真っ先にあずまやのベンチへと向かう。
人が居た。 しかも、柳瀬が居た。 多少肩のところが濡れている。だぶん柳瀬も雨宿りをしているのだろう。
3つあるベンチの真ん中に座り、目を 瞑りながら音楽を聞いているようだ。 思わずぼーっと突っ立っていると、私のことに気づいた のか、ヘッドフォンを取り、私を見上げてきた。

「…あれ、夏川。何やってるの?」

「な、何って、雨宿り?」

「そうか。なら、座りなよ」