今のところ、家で都世知歩さんがお仕事の愚痴を零している姿を見たことがない。
「疲れた」も言わない。
だからかもしれないけど。
都世知歩さんが私に色々聞かないのと一緒で、私も彼の「外」を知らず、唯一が「菜々美」さんだからかもしれないけど。
揺れるように、そんな気がした。
そっと都世知歩さんの横顔を覗いたら、泪が、見えたような気がして私は。
焦って彼の肩を掴んだ。
「都世知歩さん……!」
「…へ」
案外間抜けた声が聞こえた。
私の思い過ごしだったかもしれない。
「…ごめんね!泣いてるのかと…思ったの」
弱まる語尾を慌てて修正して強めて言ったりしたから、変な喋り方になった。
それを聞く都世知歩さんはあはは、と笑った。
「泣いてるように、見えた?」
「ん」
「そうか」
あれ。都世知歩さん、笑顔だ。
「無理して笑ってる?」
「そう見える?」
「見えないけど、そうなのかと思って」
そう言うと都世知歩さんは笑んで、背凭れに体重を掛け、それに答えた。
「…衵、聞いてくれるの」
私は都世知歩さんのその切ない笑みに心臓を、ぎゅう、と掴まれる思いで頷いた。
彼が話したいのではなくて、私が聞きたいのだと。
きっとそうだと思った。
だから彼はふわりと笑って、話してくれるのだ。
「俺さ、副業で、出版社で働いてて」
