――二雲を送って帰宅すると、取り出したスマホに電話の通知が来ていたことに気が付いた。
誰かと思えば、お父さん。着信は十分程前。
私は自室の明かりを付け、時計を目にした後掛け直す。
耳に当てたスマホから呼出音が鳴る中で、そういえば、前に代わろうとしてもらってから掛け直していなかったことを思い出した。
思えばあれは、ホームシックに泣いた夜のことだったから。
≪…もしもし?≫
そして電話の向こうから聞こえてきたのは、大好きなお父さんの声。
何だか聞いただけで涙が出そうになる。
「お父さん?こんばんは、衵です」
≪衵≫
第一声から変わって柔らかい声色になるお父さん。
私が特別お父さん子だったというわけではないけれど、家族の中でお父さんはずっとヒーローである。
私が小さい頃そういう仕事をやっていたって話も聞いたことあるけど、実際贔屓目なしに格好良い。
今は菓子メーカー勤務。
≪元気だったかー?≫
悪戯に笑っているお父さんが想像できる。私は「元気げんき」と返した。
聞き返すと、≪衵がいなくてさみしい≫と優しい声で言っていた。
お父さんは特に質問をするわけでもなく、長話をするわけでもなさそうだった。
でも、何もいわなくても『うん、がんばれ、一生懸命やってみ』って言われてるみたいだった。
因みに私には三歳上の、中々に疑り深い兄もいる。
世間話の後、電話を切る間際、お父さんから兄ちゃんが様子見に行くかもしれないなーと聞いたときは声が裏返った。
…更に因んで言うと、兄ちゃんはあかん、が、電話を切った私の第一声である。
