理想の都世知歩さんは、





「ああ、忘れるところだった」

ふと、二雲がにやにやしながら再度トートの中を漁る。

にやにやしているのは鞄の中の新刊と目が合ったからか、定かではない。


「見てこれ~」

緩ませた口元の前に並べて手に持たれたのは、数枚の写真。


「えっ、これ…。わー!」

よくよく見てみるとそれは高校時代の私たちが写った写真だった。


一番前面に出た右端の写真、掃除用具のあの懐かしい、しょっちゅう毛先に埃が付いて溜まる箒に跨った写真に始まり、クラスの皆と撮った写真から仲良しだった先生とのものまで数枚。

懐かしさが眩しくて、切なくなるような想いで。


「ほら、HR委員の子が写真部だったじゃん?うちらの分って二枚ずつくれたの。衵だけのもある」

「うわー。そんな前のことでもないのに若く見える」


受け取って眺めて笑うと、二雲も「髪黒いし」と一緒に笑った。


「よし。ちょっと寄っただけだし、課題あるからそろそろ行くね」

「うおお、課題。そうだよね、頑張って!」

「面倒だよほんと…新刊読めないしくやしい」

「二雲それ高校のテスト期間の時も言ってた」


口を横一列に結んで私を見る二雲に笑って、「駅まで送るよ」と立つ。

手に持った写真はダイニングテーブルにそっと残して外へ出ると、さっきの一人の帰り道より、空気が少し暖かくなっていた気がした。

それを伝えて、「もう夏だね」と続けると「気が早いわぁ」と呟かれる。


何となく、ありがとねと言ってみたら急にキモいと言われた。

キモい!?とショックを受けながら心は幸せな気持ちだった。