「――――――っ」
「……へ…」
声を発した、都世知歩さん。体勢を崩して床に滑り落ちる。
――次の瞬間目の前で、手首の甲で口元を隠したのを目にした。
それを見てしまって、泪が溢れてきた。
「!」
「……っご、ごめんなさ…」
申し訳ないと思ったのは、私の方だった。
一度に一色ずつしか出せない絵の具を、感情の分、全て一気に無理矢理出されてしまったような想いがした。色は混ざって頭が混乱して、混乱して、混乱して。
『くちびるが、ふれた。』
私の、せいだ。
起こしたから。名前を呼んだから。見惚れたから。
都世知歩さんには、大切なひとがいることを知っているのに。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
初めてだった。
