和やかに迎えた朝は、誰にも咎められない。
何故なら春だから。
春のお休みだから。
記憶になく止められたらしい目覚ましに睨まれつつ瞼を持ち上げて、一番に目に入って来るのは春のぽかぽか陽気。なんて幸せな香りがするんだろう。
寝そべったまま伸びをして、起こした身体を捻れば物凄い音が背骨の辺りから聞こえた。
何だろうこの音…。
怖くなったが、いやいや気にしない。
何故なら春だから。
春のお休みだか――起きよう。
今日は私がご飯当番なのだけれど、目にした掛け時計の短針が十時を指すこの時間でも彼の声を耳にしないということは、恐らくまだ起きていない。
ダイニングへ足を運んだところで、そういえばと思い出す。
そういえば昨日、私が寝る頃、都世知歩さんの部屋から電話の声が聞こえていたかもしれない。
もしかしたら遅くまで続いたのかな。
お仕事……は、うん。多分大丈夫。あったら早起きするよね。
何の仕事しているのか知らないけれど不定期だからなあ。
お休みならそれはそれでいいとして、この時間から朝ご飯作って食べるかな?
まだまだ寝る気なのだろうか。
洗面所で顔を洗いつつ色々考えた結果、とりあえず一人分でいいかなーという結論に至り。
顔を拭こうと手を伸ばして、少し上の方にあるタオルを手探った。
タオルに辿りついて、そのもこもこに埋まりながら鏡を見るとそこに人影が映り、「ぶわ!?」と変な声を上げたが都世知歩さんだった。
驚きすぎた私の心臓がバクバクと胸骨辺りを叩き始める。
「ごめん」
目をしょぼしょぼさせた彼が一言驚かせたことについて言い、隣に来る。
「おはよう」
「オハヨウゴザイマス」
