理想の都世知歩さんは、





彼が女性に羨まれそうな小顔を少し傾ける度、綺麗な金髪がふわりと揺れる。

顔ちっちゃいなー。


「ご馳走様でした」


あれえ!?

ピザが無くなってる…私未だ一枚しか…。


「やっぱり市販の冷凍食品といえど侮れないなあ。日本の文化ですね」


え、ちょっと…。

思ったより侮れないの貴方なんですが…。うちも食費に贅沢できないのですが。私お昼これで終了決定なんですが。


「ひどい」


「はい?」

王子様はどこからか取り出したハンカチで手を拭いていた。何だこのデジャヴ感。


「流石にひどいよ王子様」

「は?王子様?」


私は空腹の切なさと悔しさに感情が溢れて下唇を噛んだ。


目下のピザは、もうそこにはない。パリパリのかすしか残っていない。


「こんなこと言ってけち臭いだろうけど、これは、このピザは、買った時に都世知歩さんとじゃんけんして、私が勝ち取ったマルゲリータで。一人一枚なんて贅沢な気がして、楽しみにしていたのに」

「なに、トヨチホ…?」

「ふ、ふつうは半分ことかじゃないの。思いやりとか、我が儘かもしれないけど気遣いとか。なかったの」

「…」

「ひどいよ…」


もう一度下ろした視線の先に白い受け皿が映ったけれど、やっぱりそこにはかすしかない。



黙った王子様は立ち上がり、白いハンカチを持ったまま奥へと消えてしまった。

初めて来たときとは違って部屋の中の明かりはついていたけれど、これは用済みになったから帰れということなのか。


私は虚しく立ち上がった。

しゃがんでいた脚は、痺れていた。