「おじゃまします」
といっても微妙に私は玄関からはみ出た位置におずおずとしゃがみ込み、居る。
玄関先に座った貴堂の王子様は、まるで本当に邪魔だとでも言うかのように頷いた。
私、ガキ大将と子分の関係じゃなくて、お友だちが欲しいのですが…。
「頂きます」
彼は綺麗な挨拶をして、目に見えない速さでピザを一切れ口に運んだ。
ピザは一瞬にして消えた。
どこいった?
入口にしゃがみ、ドアの押さえとなりつつある私も慌てて「いただきます」と唱えて食べ始める。
「和平衵」
どうしてなのか私の名前をフルネームで呼ぶ彼は、じっと視線を向けてきた。
ピザを口に、顔を上げた私と目が合う。
「有難う」
「!」
笑ったーー!
笑うんだ、そりゃ人間だもの、笑うんだろうけど笑った!
にこ、と笑う彼は意外なことにとても自然な笑顔を向けていて、言葉も続けた。
「食費が浮きました。本当に有難い」
「……、?」
やっべ今聞いちゃいけないこと聞いちゃった気がするわ。
なしなし、なかったことに……できない。
だって聞いてしまった。
「食費?」
最早愕然とする私の前、貴堂の王子様はピザの切れ分を次々に消えさせながらサラサラとしている。
「はい。さっき俺、『こんなの俺ん家にだってある』と言いましたよね?それなのにくれるなんて余程優しい人なんですね。友人になりましょうか」
「変人?」
「いえ、友人に」
違うよそうじゃないよ貴方のことだよ。
