腹ペコが良い具合に彼に憂いを帯びさせていて有無を言わさず可哀想な感じがしたので、渋々頷いて一旦ドアを閉めた。というか閉められました。
朝ご飯と言っても二人分だったし、今日は都世知歩さんもお昼外食ということで残り物があるわけでもないので一から作ることにしよう。
手早く作れるものがいいよね…揚げ物にしようと思っていたけど冷凍食品のピザでいいかな…都世知歩さん怒るかな。
でもね、都世知歩さん。これで私にもアパートのお友だちができそうです。
歳も近そうだったし、ちょっと私は嬉しいです。
「…ピザ?」
「うん、ピザ」
電子レンジでチンしたピザを持って、そのまま下へ降りた私は再びチャイムを鳴らした。
玄関で待っていたかのような素早いお出迎えに意気揚々とピザを見せたところだ。
「こんなの料理じゃないだろ!!?」
「ええ!?」
「何が『ええ!?』だふざけるな!こんなの俺ん家にだってあるわ!!」
わあああ何か知らないけれど私真昼間から怒鳴られてる!
しかも初めましての人に!
貴堂の王子様はドアを力強く叩いて威嚇し、私を震え上がらせた。
「じゃ、じゃあ持って帰っても…?いいですか」
「それは駄目です」
何故?
「和平衵も食べる気なのか、それ」
「あ、うん。私もお昼これからだったから」
「朝ご飯抜きの俺を差し置いてですか。食べます」
私はピザを両手に、瞬きを二回程繰り返した。
貴堂の王子様はドアを広く開けて背を向け、「玄関なら入っても構わない」とお零しになられた。
