真っ暗な中から出てきたのは、金髪の王子様だった。
こりゃおったまげた……。
都世知歩さんと張る体格の良さに、触れずとも判るサラサラの髪の毛。
私を見下ろす気品溢れる眸が僅かに青みがかっている気がした。
「すみません…俺、朝帰りで」
おっと。何を言い出した?
ん?王子様が朝帰りとか言うわけ…ないないない!
だって私今、こんな人が何でここに?まさか訳あり?灰かぶり!?とか考えていたもの。
ほら、眠そうに目を擦る麗しい王子様じゃないかどう見たって。
「朝ご飯も口にしていなくて」
貴堂の表札に住む王子様は自ら身体をドアに持たれかけた。
コツンとドアに頭を当てると、サラサラと前髪が目元に影をつくる。
「それで?一体誰だと言うんですか」
目が、「早く寝たいんだよお前さっさと帰れよ何の用事だよ」と言っている。
「お休みのところ申し訳ありません…202号室の和平衵と申します。あの、回覧板を渡しに来ました」
イマイチ素性の掴めない王子様を勘繰りつつ、そっと回覧板を手渡す。
それを受け取る指先まで美しくて眩しかった。
が、しかし王子様は王子気質が過ぎるのか、少しお口が悪いようだった。
「和平衵。朝ご飯作れますか?」
「?」
「残り物でもいいですよ」
「??」
「もう階段昇る気力がないので持って来てください。それ終わったら帰っていいので頼みます」
これが、私、和平衵と貴堂の表札に住まわれる王子様の出会いだった。
