理想の都世知歩さんは、





中村さんのお宅だったらそのままポストに入れておいていいのだろうけど、流石に顔見知りでないお宅のポストに勝手に入れるのはアレなのかなとか考えた結果。

古びたチャイムに指を伸ばした。


音が鳴ってから数秒、奥で椅子に当たるような痛い音がして背筋が伸びる。

ももしかして、都世知歩さんと一緒に伺った方がよかった…?


あの鮫の怖い映画の、よく耳にする曲が胸の中で責めるように鳴り心拍数が上がる。


ドアがキイィと耳に嫌な音を響かせて開く。

中から伸びた影が足元を掴んだ時は腰が抜けるかと思った。


正直に言うと、お化けが出たとさえ思った。


だって中に明かりがついてない……。



「…え、どちら様?」

「!!?」


ドアを開けて、朝の光に眩しそうに目を細めた後視線を下ろして目が合った。


私は瞬時に一歩下がり、私たちの住むこの古いアパートの全体を見上げ、ここが妖怪屋敷とか幽霊屋敷でないことを確認する。



「あの?」



息を呑む。

さっきとは違う方向に心臓がドンドコドンドコ音を立て始める。




皆!!!!



イケメンだ!!


イケメンが沸いて出たぞ!!このアパートは異常か中村さんが面喰いかのどっちかだ!



「ちょ、ちょっと…バカデカい声で中村さんの悪口止めてくれませんか…近所迷惑なので」


私また声に出てたんかい。

「きんちょです」


「は?」

「近所です」

「ああ、近所の方」


中々順応力が高いと見た。