理想の都世知歩さんは、





「大人1年目のくせに!」

「うっせ」

「じゃあ大人は寝癖がつかないように寝ることはできないんですね」
「何が言いたい」


ソース付きの目玉焼きに喰らい付く都世知歩さんに向かって、「都世知歩さんのね――」まで言ったのに、「あ、美味しい。半熟だ」とちょっと嬉しそうな顔を見て、それに答えたくなってしまって意気消沈。


ここぞというときずるいのも、大人なのかもしれない。



「そうだ衵。お前下に住んでる子ども見たことある?」

「子ども?『下』ってことは中村さんちの隣?」

「ううん。中村さんち。101だと思ってたけど102だったから中村さんち」


「えっ中村さん102だったんですか!」

「あー…、もしかして101のピンポン押した?」


やってしまった。だから中村さんがいると言っていた時間にも出なかったのかと思いつつ渋々頷くと、静かに「俺も」と聞こえてきた。なんなんだ。貴方もか。


「で、見た?」

それに首を横に振る。
「子どもってことは中村さんのお子さん?私それも今初めて聞いて」


「へー…。ま、いっか」

「?」


何かあったのかと思ったけど、あっさりと全て平らげた都世知歩さんが食器を片手に席を立ったので、話は中断されてしまった。


そうやって、其々の1日は始まっていく。



彼は今日もお仕事だ。




因みにここ最近でわかったこといえば、都世知歩さんは土日に当然のように仕事があるということ。しかもそれがメインみたいに言う。なので平日にお休みがあるけれど、その平日の間にも仕事へ行くことが多くて、そのときの限られた日にワイシャツを着る。そうはいっても平日も着ない日の方が多いことは多い。
私服の仕事なんでしょうか。


うー…ん。都世知歩さんは仕事の幅が狭められないから予想不可能だ。