「昨晩、都世知歩さんの寝言で…『なみ』と――――」
そこまで耳にして、私から目を逸らした都世知歩さんは前を向いた。
「…………………………ナナミ?」
何ですか今の間、とツッコミたかったけれど、そういう空気じゃなくなった。
彼は蒼い顔をして冷や汗をだらだらとかいていた。
こんな顔をする都世知歩さんが地球上に存在するとは夢にも思わなかった真実だ。世紀の大発見だ。
ちょっと盛った。
「俺菜々美って言ったんだ…?」
「え」
「寝言……うわ…引く」
菜々美?
「いや、ななみかどうかは」と口にする私の声も耳に届いていないくらい動揺している都世知歩さん。
「衵」
「は、はい」
「それ、“干渉”に入るから」
「え……」
思考が停止する私の横で、彼は真面目な顔で振り向いて。
僅かな笑みさえ浮かべた上できっぱりとこう言った。
「それ以上、踏み込むの禁止」
