女の子を引っ張った後僕は大泣きして、女の子も大泣きして、二人の泣き声を聞いたその子のお父さんは駆け付けた。

僕を見て僕ごと、女の子も抱き締めた。

張りつめていた糸がぷつりと切れて、涙が後から後から零れだす。


「ありがとう。この子はおまえのヒーローだな、衵」

「うんっ」


こんなに泣いたのは初めてだった。


あまりにも泣くから、先に泣き止んだ女の子に「泣かないで」と言われてしまった。


唇を噛み締めると、その子のお父さんが言った。


「『泣かないで』っていうのは、本当に泣くなって意味じゃない。心配して、悲しい想いをしないでって意味だから泣きたい時は泣いて、笑いたくなったら笑えばいい」

「あこめそれ知ってる!」

「だってパパが教えたもん」

「あ、そっかぁ!」


僕は小さな声で、「こわい」と言った。


怖かったのは、泣くことだった。


泣いたらお父さんは、僕にえらいと言ってくれなくなるだろう。


「そんなに小さな世界で生きなくていいよ」


ぬかるんだ地面に平気で膝を着くその大人は大らかに笑って僕の額を弾いた。


痛いのに、僕は笑顔になれた。



後で同じ涙の跡を付けた女の子がこっそりと、「パパ、リオンマンっていう本物のヒーローだよ」って教えてくれた。


オレンジ色の光に包まれて眩しいその人は確かにヒーローで、僕が伸ばした手を握ったその子もまた、僕をヒーローにしてくれた人なのだと思った。