泣き声がピタリと止んで、また泣き出す。
おとうさん、おとうさんって。
僕は橋に寝そべって、橋の下を覗いてみた。
いた。
小さな女の子と目が合う。
目が合うと、女の子はどうしてか瞬きを繰り返して泣き止んだ。
「こっち」
呼び掛けると、素直に言うことを聞いた。
「もっとこっち、きて」
膝を擦りむいたみたいで、たくさん血が出ていた。
誰かが「あこめ」ってずっと呼んでいる。
僕はそれを聞いて、「あこめ」って呼んだ。
涙が零れそうな、不思議な名前だった。
「あこめ」
繰り返して呼ぶと、女の子は一生懸命手を伸ばしてきた。
僕はその手を無我夢中で掴んで、離さなかった。
身体中、伸ばした左手も肘も、心まで痛かったけれど、もう必死だったから。
