「あの、とよちほさん。無視したりして…ご免なさい」
前を向いてドーナツを持ったまま呟く。
一瞬の間を置いた後も応答がないので、都世知歩さんの方を向いてみた。
「って何でドーナツ食べてるんですか!」
彼は再びどこから引っ張り出したのか、私と同じドーナツを頬張っていた。
「ふぉふぁふぇふぁふぃっふょふぃ」
「何ですか全然わかりません」
あーー。何だかよくわからないけれど都世知歩さんは食べ方が異常な程可愛い。
普段は全くそう見えないのに意外だ。
まだふぁ行の言葉を続けていたが、そんなのわかるか!と首を横に振り続けると、止めてちゃんともぐもぐに集中した。
利口。
ぐっと飲み込んで、さらりと口にした。
「…衵が、一緒に食べたそうだったから?」
ぽかんと口の開く私の横で、都世知歩さんは難なく二口目に突入。
どうして、昨日思ったことが分かったの?
びっくりしたことを問い質したかったけれど、今聞いたらどうせまたふぁ行で返されてしまう。
でも昨日、昨日は、起きていたってことはないだろう。
だって都世知歩さんは寝言を言って…。
あ、そういえば。
ねごと。
き、聞いてみたらダメだろうか。名前のこと。
それは、“干渉”に入ってしまうだろうか。
…やっぱり、止めておこう。
あんなに大事そうに呼ぶんだもの。
簡単に聞いたら、いけないことかもしれない。
そ、そりゃあ気にはなるけど……うーん。
「衵、食べるの早いね」
「え」
「?」
「あ、いえ、そうですか?私遅い方ですよ」
「俺は早い方だよ」
「?ややこしいですね」
首を捻ると、都世知歩さんがふと口元に弧を描いた。何だか、ふたつしか変わらないはずなんだけど。余裕あるなあと思ってしまう。
