理想の都世知歩さんは、





開けっ放しの玄関先で、ん?と首を傾げれば、和平衵の顔が段々と紅くなった。


「え、え、知っ…て…え?」



は?

何を今更。


「教えてよ」


ニ、と口角を上げてみせればはくはくとした後、慣れなそうに口を開いた。



「ええ、と…」


「ウン」


ちら、と見上げる彼女に作った笑顔だけを向ける。

和平衵は僅かに眸を輝かせて言った。



「とよちほさん、は、私にとってヒーローみたいな人で……」



「…職業柄?」


疑問に思って問うと、困ったように首を横に振っている。

…ギャグだったんだけど。



「キラキラ、していて」

「うん」


「最近気付いたのは、辛い時に現れるんじゃないんだってこと」



短くなった髪が、冷たい風に柔らかく揺れた。



「都世地歩さんは辛いって思った気持ちを、簡単に引き出して助けてくれていたんだって気付いた。でも――――」



和平衵は憧れと恋心を眸の中に閉じ込めるようにそっと、瞬きをする。



「助けてくれる“ヒーロー”がずっと傍には居てくれないってこと、わかるから」