「心配」
囁く言葉の先、衵は泪の零れ落ちる眸を丸くする。
髪が短いと別人みたいだ。
それから、ふと息を留めて口を開く。
「……とよちほさんの方が心配な気がする」
言ってから、自分でも気付いたように瞬きをしてる。
「なにか、ありましたか」
掬い上げるように覗き込まれて、見透かされたような気がした。
ぐら、と見える世界が揺らぎそうだった。
衵は容易に、冷たい指先を俺の方へ伸ばす。
「何も」
少しだけ、笑う。
少しだけの力を振り絞って。
衵は。
覗き込んだ後僅かな背伸びを解いて、地に足ついて、指先を離してふと微笑んだ。
「一緒に泣こう」
