ず、と鼻を啜る衵に見上げられて、思わず笑みが零れる。


懐かしい。

衵、前にも風邪引かなかったっけ。



「ほ、ほんとにとよひほさ……?」


「寒過ぎて口回ってない」




「偶然、ひさしぶり」と呟く。




「と、都世地歩さん……だ……っ……ふ」


「!?」


突然ぶわ、と表情を揺らがせて奥歯を噛み締める衵は、相変わらず人の顔を見て泣く。


すみません、と謝りながら目元を強く擦るから、弱っているのがわかった。

袿も、衵の元気がないことは言っていたし。


仕事で何かやらかして落ち込んで、更に風邪まで引いて弱っているらしい。


呆れたように溜め息を吐く。



すると、さっきは見えなかった白が電灯の明かりに浮かんだ。



それを見届けた後でそっと額を寄せる。


「衵が家出て行く時、心配かけないって約束させればよかった」