理想の都世知歩さんは、





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遠くの方で、太鼓の音がした夜始め。

「兄ちゃん」


またしても転がっていた私はその音を聞いて起き上がり、すぐ側でノートパソコンを開いて、レポートだか何だかやっていた兄ちゃんに声を掛ける。

兄ちゃんは画面の明かりを反射させた度の弱い眼鏡を外して振り向いた。


「あこめ、髪ぼさぼさ」

「うん、あのね」


兄ちゃん、あのね、ともう一度。


「どした?」


「おま……おま…」

「『おまえのかあちゃんでべそ』?」

「いやちがう」



っていうか母ちゃん一緒だよね?

兄ちゃんにわざわざ言う必要性を感じられないよ…。




私は。



――『行きたいの?』


あの言葉を思い出していた。




「やっぱりだいじょうぶかな、うん」