布団の上に正座をしてパジャマの裾を握り、小さく俯き話す。
聞こえてこない声に不安が過ぎって目線を上げた。
そうしたら、思わず、言葉に詰まってしまうくらい。
意地の悪い顔をして子どもっぽい笑顔を魅せて、都世知歩さんが「寝たフリだったろ」と。
「ねたふり…?」
それは違うと首を横に振る。
何か、何か、とよちほさんが綺麗だ。
「ふーん、まあいいけど。言ったから」
「ん?」
「『俺が衵のお母さんになってやる』な」
「はい?」
「毎晩毎晩『ママー!』って呼んで泣いて迷惑被っても面倒なので、役割的に決めた。勝手に」
「泣いてないし勝手に…!」
「あ、当番制は譲らないからよろしく」
じゃあ何の為のお母さん役割…?
分からない。
分からなすぎて困る。
「あとは何も憶えてない?」
ちょっと偉そうに言われ、寝癖の上に疑問符を浮かべる。何だろうこの顔。物凄く気になります。
畳の上に胡坐を掻く都世知歩さんと、布団の上に正座をする私。
ふたりとも右側に寝癖がついているのは向き合って眠った証拠なのだと、私はその時気が付かなかった。
ただ、とてもすっきりした気分で。
爽やかな朝風が吹いて髪を揺らして、
何となくそれが都世知歩さんのお陰なのだと知っていた。
都世知歩さん。
あなたは、本当は優しいひとでした。
きっと、私が思っているよりずっと。
…ずっと。
「衵ごめん。朝になったら部屋の中明るくなるの計算外」
「?」
「けどおまえさー、あのパンツとブラの柄はないわ。あれ10年前のですか」
「……………………、何て?」
ご免なさい前言撤回します。
この野郎。
最っっっ低っした!!!!
