「声に出てる……」
「へ」
「衵の、お兄さんですか」
笑いながらいつの間にか階段を上るよう促され、前で見上げた背中がそっと言った。
何で判ったんだろう。
「衵もよく思っていることが声に零れてたし、初めの頃、同じこと言ってましたよ」
本人が俺に聞かれているって知ってるかどうかは知らないけど、と、とよちほくんが階段を上ってすぐの部屋の鍵を開け、中へ入って行ったからそれに続いた。
「おじゃまします」
玄関正面のダイニングテーブルには煙草が置いてあった。
奥に二部屋のドアが見え、左側は開けっ放しだったけど右側はドアが閉まっていた。
衵の部屋がどちらだったかは知らない。
それに、本当に二か月前までの約三か月間、衵が此処で目の前の彼と生活していたのかと思うと不思議だった。
「どーぞ」
掛けてと言われ、従う。
すぐ目の前にお茶の入ったコップが置かれ、麦茶だと説明を受ける。
「あ。そういえばこれ」
俺は手に持ったままだった紙袋を持ち上げた。
とよちほくんはコップに口を付けながら眸だけで興味を示した。
