一階からも小さくうわ、と聞こえた。


慌てて下りると、私の荷物を怪訝な顔をして起こしてくれたりっちゃんと会う。

彼とはこの前の時以来ちゃんと話していなかった。



「引っ越し今日?」

「ん」

「…中村さんから聞いた。宵一寂しいんじゃない」

「はは」


お礼を言って受け取る。

私のキャリーケースには、今の衝撃で小さな傷が沢山ついてしまった。


りっちゃんは丁度良かったと口を開く。


「この前のこと、謝らないから」


彼はポストを開けた後だったのか、沢山のチラシを手にしていた。
もしかすると家を空けていたから最近会わなかったのかもしれない。

チラシの中には、あの、夏祭りのものが入っていたように見えた。


「その代わり」


「?」

「和平が知らなかったこといっておく」


彼はちらりと高そうな腕時計を目にした。


「宵一は最後まで言う気ないだろうけど、和平と暮らし始めて、家では絶対煙草吸わないようにしたって知ってた?」

「――――」

「お前は無意識だろうけど、咳してたの目にしたからだそうで」

「私…」




――思えば。


始めの頃は煙草吸っていたのに。




「だから。寂しくないってことはないんじゃないの」