理想の都世知歩さんは、





――――――…




「菜々美さん追いかけて」




都世知歩さんは、眸を曇らせた。



勝手なことを言っているのはわかってる。



私がもし都世知歩さんの立場で、誰かに都世知歩さんを追いかけてと言われても立ち止まっただろう。

好きなひとには、好きな人がいたから。


だから、都世知歩さんの望みじゃない、私の我が侭。



都世知歩さんは、私のヒーローだった。

何度も滲む視界に姿を現して、簡単に救ってくれた。


だから、都世知歩さんの視界がもし滲むようなことがあったら、私がしたいようにする。


大丈夫、我が侭を言って嫌われてもいい。



すると都世地歩さんはやっぱり「ばか」と囁いて。



私を通り過ぎて。


同じように過ぎた菜々美さんを追うために、玄関を出て行った。



一度だけ私の髪に触れて。




ばかは、都世地歩さんの方。




そのやさしさは、菜々美さんに届けるべきなのに。





小さく息を吐き出した時、パンツのポケットから着信を知らせる振動があった。