理想の都世知歩さんは、





「――のえ…っ」



短く聞こえた単語に肩を揺らし、開けっ放しにしていた部屋のドアから踏み込む足音を聞く。



「…は…」


私はというと未だ夢の中で、ちょっと足元が寒いなーくらいしか現実を感じていない。

しかし、誰かがそこで立ち止まったのは確かだっただろう。


誰か。



「…え、あ、何…」


呟く傍から落ちる単語。


しっかり耳に届くまでに時間を有した。


そこで初めて唸り声を上げ、身体をもぞもぞと動かす私。

温かいのは衛くんの手だ。

「…あれ…」

ってことはそうか、ここ、衛くんのおうちか。温い頭で思い出す。寝てしまったようだ。


…それにしても、急に眩しくなった。



「…………ん?」


ゆっくり瞼を持ち上げて、真っ先に目に入ったのは何とも言えぬ彼の顔。

非常に、見たこともないような険しい顔をしていらっしゃる。皺が凄いね、深い、りっちゃんがまさかそんな表情できたなんて知らなかった。

と、言いたくなるような彼の顔。



うん。


蒼白になるより先に、へらへらするしか能がなかった私。




ここからどうしよう?