【SIDE 都世知歩 宵一】
山羊さんと会った後、寄り道を重ねて家へ帰る。
夕方の影が伸びていた。
「ただいま」
ドアを開けきる前にそう呟いたのは、当然衵に寝ているよう言ってあったからで。
だからすぐそこに、ダイニングテーブルにいることには疑問を持った。
次に沸々と湧き上がる苛々。
理由が他にもあったことは、当人である俺さえ知らず。
「何してるの…」
思い切りドアが開けられたことに動揺し、俺の声に表情を苦く引き攣らせている衵。
「え、と、…あっ」
靴を脱いだ後ずけずけと距離を縮め、衵の前のテーブルに広げられたそれを手に取った。
指に引かれたのは雑誌。
「もう一回聞くな、何してた?」
「仕事の…予習してて…」
ごめんなさいと小さく謝る衵。もう素直なのは分かってるから要らない。
明らかに具合の悪そうな、色味の無い顔。
堪えきったように出る咳。
じり、と喉を動かすあたり傷めてる。
なのに薄着で。
「熱は」
何か言い訳でも施そうと思ったのか、口を開きかけたところで額に指を伸ばして触れさせた。
「あっつ…」
