【SIDE 貴堂 律】
『 雨が? 』
雨が降っていた。
講義に出ようとビニール傘を手にして玄関を出た。
顔を上げた時、初めに青の世界が映り込んだことは、秘密。
そしてすぐ和平の顔が視界の端に入り、玄関の鍵を閉めた。
分かっててやってんのかな、と思う。
そうじゃないことくらい知ってる。
だから笑みを浮かべる。
自分に。
視界に和平の姿を映り込ませる。
雨が降っていたなんて忘れていた。
雨が降っていたなんて忘れていた。
『 雨が? 』
たった一言。
別に、感情に名前が無くてもいい。
そう思う切欠だった。
