それに対し、「何で?」と問い返されたことにドキリとした。
「衵気ぃ遣いだから絵文字とか使う方じゃないですか。なのに最近ぼーっとしたような返事とか多い気が、」
じっと様子を窺われていることに気付いて、時々だけどと付け加える。
「五月の…始め辺りとか、確か頻繁に」
彼は「五月始め…」と繰り返し、カップに口をつけた。
「ああ。その辺、怖い思いしたからかな…」
まるで苛つきを滲ませるかのような物言いに、表情に、その先をどんなに聞きたくても問うことが出来なかったと思う。
私に譲って残った方のカフェモカを飲み終えた都世知歩さんは言った。
「スマホ修理出させるけど、急用あったらどーぞ」
そう言って、私が捨てるはずのカップを手にした代わりに、丸テーブルに電話番号が記されたメモを置き。
ふわりと会釈をして、その場を去った。
その後、衵から修理し終えて連絡が来るまでも都世知歩さんの番号にかけることはなかったけれど。
私の目に映った彼の印象は、きっと衵とは違うものだと実感した。
彼の眸は、衵を素直だと云っていた。
それを見た私の目は、彼をも素直だと云っている。
ただ、彼と衵の『素直』は違う。きっと彼には何かがある。
衵にはない、衵にはまだ気付けない、何か。
