「…」
「カフェモカとアメリカーノどっちがいいですか」
間を置いて切り出す彼が立ちっ放しだということに気付き、正気を取り戻す私。
落ち着け。
キド王子(乙女ゲームに登場する人物の渾名・二雲の推しメン)の方がイケメンだ。
「じゃ、じゃあアメリカーノを」
少し警戒して答えると、都世知歩さんと目が合う。
「へー。苦い方が好き?珍しい」
衵、こんな人と暮らしているのか…凄いな…。
もしや差し入れに鼻血対策用ティッシュとか必要だったのかな。
前行った時はこの人不在だったからな。
うん。やっぱり凄いな。
お礼を言って受け取ると、都世知歩さんは向かいの席について口を開いた。
「衵、熱出てて」
「えっ」
声を上げた私をちらりと見て、続ける。
「しかもスマホが昨日の雨にやられたらしく、やぎさんに連絡出来ないってべそかいてた」
けらけらと声をあげて笑っている。
思い出し笑い。
笑顔は、幼かった。
そして私は、どうしてかその時。
衵が、日常的に。
どんな気持ちでこの笑顔を見つめているのか気になった。
「…衵、何か…悩みとかありそうじゃなかったですか?」
