「……うぁ」
しまった変な声出た。
綺麗な男の人。
待っ、待って、今もしかして、“都世知歩”って言った?
嘘だよね?
「あ、の」
「…。もしかして、“ヤギニクモ”さんじゃない?」
外の世界から、肌触りの良さそうなボーダー入りTシャツに、光が乱反射している。
彼は怪訝そうに問うた。
…固まった私に向け。
瞬きをひとつ。
「……すみません、ナンパとかじゃないんで人違いなら…」
少し周囲の視線を気にしたように付け加えたが、周囲の視線の一割ほどしか貴方と同じことを思っていないと思う。
残り九割は、貴方の容姿に見惚れているのだと思うけど。
気付いていないのか。
どうなのか。
都世知歩と名乗った彼が軽く会釈をして、視界にチノパンが入ったところで、やっと引き留めに入る。
「や、やぎです、やぎにくも」
「あ、やっぱり」
振り返る七分丈の袖から覗く、色白ながらも引き締まった手首には触れられないような何かがあり。
彼のような美男子を、殆どマネキン化してしか目にしない衵が言うだけあった。
