【SIDE 山羊 二雲】
髪色と合ったピンクベージュのジャケットから覗く腕時計が、12:30を指そうとしていた。
大体待ち合わせ場所になるカフェの窓際席には、昨日とうって変わって晴れ晴れとした光が差し込み、耳に下がるイルカのピアスに反射する。
私はテーブルに置いたスマホの画面を見つめていた。
昨日、衵からの返事が途絶えたままだったから。
この時間にこの場所で変更ないよね、と、自分に言い聞かせて外の乱反射したような世界を見遣っていた。
「すみません」
わいわいがやがや沸き立つ店内に向けた耳の奥、そんな風に通る声が聞こえる。
「ヤギ、ニクモさんですか」
「え」
ついていた頬杖を外して向いていた方向の逆を向く。
初めに、二つのカップが目に入った。
差し出されていて。
どちらも同じ、白地にカフェのロゴが入ったカップ。
次は目線を上げるより先に、甘いの得意か聞かなかったんで、と口にする低い声が耳に届いた。
「こんにちは…和平さんとルームシェアしてる――“都世知歩”といいます」
