理想の都世知歩さんは、





その後、彼が置いて行っていた、偶然にも今片腕に抱えている紫陽花と同色の傘を差し、お店に花を届けて出勤するため外に出た。

三十分くらい経っていたけれど、変わらず雨は降っていた。
さっき程ではないにしてもぱらぱらと。


傘を広げて坦々と階段を下りていく。


すると、最後から二段目の段差にさしかかった時、目の前でドアの開かれる音がして。

反射的に上げる顔。



「……和平」



あ、と声に出してドアを開けたりっちゃんと目が合う。

何だかあの綺麗な髪、久しぶりな気がしたけれどきっと気のせい。


「ドーモ」

小さく会釈している間に、彼は自宅の鍵を閉めていた。


そのままぼーっとりっちゃんが鍵を閉め終えるのを見ていて、気付いたら彼に顔を覗き込まれていた。

「わ」

「雨の日に、辛気臭い顔」

「えっ…」


眉間に皺を寄せる。と、りっちゃんは「また雨の日だ」と、囁いた。


一瞬何のことか分からなかったけど、すぐ、前回会った時もそういえば雨が降っていたかな、と思う。


すると曇天を見上げた彼がそこから目を離し、口元に小さな弧を描いて私を見た。

また背景で、雨が降っている。


「変」


ひとこと、りっちゃんが言った。


前回も今日も、まるで選択したかのように雨の日に会ったことを言っているのかと思った。