理想の都世知歩さんは、







走って、走って。


紫陽花を離さないよう抱きしめて。


都世地歩さんが仕事に行った後の、誰も居ない玄関に息を切らして走り込んだ。




背で閉まるドアの音さえ聞こえず、どういうわけか涙が零れ落ちそうだった。



傘は、一度お店に足を運んだ際に忘れてきてしまったみたいだと気付いた。


この紫陽花も、お店に届けに行かなきゃいけない。


風邪引かないようにしないと。


一人で。一人で住んでいるわけじゃないんだから。



「……っ」



頬に付いた髪を払って、濡れた紫陽花を玄関先にそっと置く。

靴を脱いで靴下も脱ごうと下を向いたら、雨粒以外のものが床に落とされた気がしたけれど、気が付かない振りをして。

洗面所に向かった。