「私、今の好きな人に出会ったのがこんな雨の日でね」
「――――っ」
『だから、つらい』
やめ、て。
そう、無意識の内に、心が叫び声を上げていた。
脳裏にたった一人の口にした言葉が、表情が、焼き付いて離れなかった。
大切だと、言っていた。
それくらい誰かを想う気持ちって、どんな気持ちなんだろうって思うくらい。
夢で呼んでしまうくらい。
夢にみるくらい。
出会った時のことを、あんなに優しい顔をして話せるくらい。
“好き”なのだ。彼は。
菜々美さんを。
私は、彼が菜々美さんのことを口にした時でしか二人のことは何も知らないし、分からない。
なのにこんなに心が痛くなる程、どれ程都世地歩さんが今目の前にいる女の人のことを大切にしているかくらい分かる。聞かなくたって。
都世地歩さんがそういう想い方をしているからだ。
大切に、ただ想っている。
