クッと、喉の奥の方で何かが詰まった。
そ、それは…あれだ…もしかして、いやきっと恐らくこの前の、都世地歩さんが玄関を開けた瞬間浴槽へ飛び込んだ時のことを……。
「あの、」
「ハイッ!?」
思い切り声が裏返ってしまった。
菜々美さんの後ろで背景になっている大きな雨粒も、今の私の視界には入らなくなっていた。
彼女はつられて驚いた表情をみせた後、口篭もって下を向いて、迷ったように切り出す。
「あこめちゃんて、もしや宵一の彼女さんだったり…」
「!?!?」
肩についた水滴が吹っ飛ぶくらい驚いた私は目を丸くする。
「いえ!?とんでもございません!!!!」
うおおおお、と勢い宜しく大否定する。
これは、非常にまずい。
「全然、全然そういうことじゃないです…!あ、都世地歩さんはとてもお優しい方で…嫌いでどうのこうのという訳でも、全然なくて」
都世地歩さんは、貴女のことが、菜々美さんのことがお好きなのに。
大切なひとなのに。
「…うまく、言えなくてごめんなさい…」
ほろ、と心の中で想い返して、肩の力が抜ける。
青い青い紫陽花を抱きかかえた。
