【短編】愛して欲しい。




ついさっき、最近では珍しく仕事が早く終わり、この時間なら莉衣に電話してもイケるなって思って携帯を開いた時だった。



「あっれー? 浩君だよね?」



背後からかけられた聞き慣れない声に振り返った。



「あーやっぱりぃ」



ニカッと笑う女の顔を思い出すまで数秒かかった。


確か、莉衣と合コンに来てた女だ。


名前、何だったっけ?

そう思っても、相手は俺の名前を覚えてるのに聞いたら失礼か? なんて冷静に考えてしまう。



「あの時、抜けるの早かったよねー!」



大口を開けて笑う女に、確かに。それしか答えのない俺は苦笑いを零した。



「で、莉衣とヤッたんでしょ? 浩君も手が早いなぁ」



ぬぁ!?



最近の女子高生はすげぇな。

んな事まで軽々と話すのかよ!



俺の方が年上なはずなのに、戸惑ってしまって笑うしか出来ない。



「でも莉衣って、後腐れなくて楽でしょ?」



楽しそうに話す女の言葉が、俺の頭の中で止まる。



え、それって……



「どういう意味?」



少し掠れた声が焦りを感じさせた。