「ごめんなさい!」

「本当におまえってやつは…」

「まぁまぁ和彦さん、そう怒らんでも良かろう…」

時は流れ、シュウの店でのパーティの日となった。
出掛けに、美幸がコーヒーをこぼし、その着替えに手間取って、約束の時間に少し遅れてしまった。



店に着くと、皆が立ち上がり、今にも乾杯が始まるところだった。
常連だけだという話だったが、思ったよりも大勢の客が来ていて、前の方は見えない。
俺達は、一番後ろでなんとか乾杯をすることが出来た。



「もう席はいっぱいのようじゃな。
あそこしか空いとらんようじゃ。」

「おまえがぐずぐずするからだぞ。」

「ごめんなさい…」

俺達は、すみっこのテーブルに座った。
まぁ、じきにシュウが俺達のことをみつけてくれるだろう。
それまで俺達は隅っこの席で、寛いでいることにした。



「どんな人じゃろうなぁ…シュウのお師匠さんっていうのは…」

「まぁ、そのうち会えるでしょう。」

俺達は、酒を飲みながら他愛ない話をしていた。
その時、聞きなれた声が俺の名を呼んだ。



「カズ!こんなところにいたのか!」

それはシュウの声だった。



「あぁ、今日はちょっと来るのが遅れてな…」

歩み寄って来るシュウの後ろに、中年の男性がいた。
仕立ての良いスーツをセンス良く着こなしている。
きっと、彼がシュウの師匠のカズさんなんだろう。



「カズ…来てくれてありがとう。紹介するよ。
俺の師匠のカズさんだ。」

「初めまして。青木和彦といいます。
シュウにはいつも世話に…」

俺が片手を差し出し自己紹介を始めているというのに、その男性は俺を見て放心したように立ち尽くしていた。



「シュウ…VIPルームに…」

「え?」

「頼むよ。この人と話がしたい。」

男性は、シュウに小声で囁いた。
そして、俺はわけもわからないまま、いつものVIPルームに連れて行かれた。