「わぁ、おいしそう!」



運ばれて来た料理に、美幸さんはまた嬉しそうな顔をされた。
今日の美幸さんはとにかく機嫌が良い。
良過ぎるくらいだ。
その原因が話されるのを、私はじっと待っていた。



「……えっと……
相談のことなんだけど……」

美幸さんがようやく話を切り出されたのは、食事をすませ、デザートを待つ間のことだった。
その様子は深刻な相談事といった感じではなく、なんだか妙にもじもじとされていた。



「どうしたんですか?」

「あ……あのね……」

俯く美幸さんの顔はすでにかなり赤くなっている。



(……まさか!)



その時、頭に浮かんだのはシュウさんのこと。
もしかしたら、恋愛相談じゃないのかしら?と、本能的に感じた。



「……美幸さん、もしかして……恋愛についてのことですか?」

「えっ!?ど、どうしてわかったの?」

「ほ、本当に!?」

「う、うん……実はね……
私……今日、純平君に告白したんだ。」

「えっ!?」



美幸さんが告白されたということにもすごく驚いたけど、その相手が純平さんだなんて、そんな……



「それでね……
純平君も私のこと…好きだって言ってくれたんだ。
つまり……両想いってことで……
なんだか、今でも信じられないくらいなんだ。」

「え……そ…そうなんですか……」



信じられないのはこっちの方だった。
だって、美幸さんが男性に告白されたことも驚きだし、それが純平さんだってこともショックだったのに、それらのことをまだ受け止められていないうちに、純平さんも美幸さんのことを好きだとおっしゃったなんて……



KEN-Gさんが純平さんをはずして慎二さんに替えてもらったのは、まるで効果がなかった……いえ、逆効果だったってこと……?



(ど、どうしよう……?)



「……野々村さん……喜んでくれないの?」

「え…?あ…あぁ、すみません!
と、突然のことで、ちょっと、び、びっくりしすぎて……」

私がそういうと、美幸さんはくすくすと笑われて……



「……そうだよね。
自分でもなんだか夢を見てるみたいだもん。
初恋は実らないとかよくいうのに、初めての告白でいきなり両想いなんてさ……」

その時のこの上なく幸せそうな美幸さんの笑顔に、私はますます困惑した。