(なんだかびっくりすることばっかりだったな…)



まさか兄さんが迎えに来るとは思ってなかった。
だって、私はもう立派な大人だよ。
ここに来てから初めての外泊とはいえ、泊まった先は野々村さんの所なのに……



(それとも信じてなかったのか?
いや、それはないよなぁ……
だって、野々村さんから電話してくれたんだもん。
兄さんは野々村さんのことをけっこう信用してるからね。
……じゃ、単なる心配性?)



もちろん、帰りの車の中ではお小言をくらったけど……
でも、そんなにきつい口調ではなかった。
今度、野々村さんの所に行く時には、なにか手土産でも持っていけとか言いながら、兄さんはどことなく機嫌が良さそうにも感じられて……



(ま、とにかく良かった、良かった。)



家に戻ると、マイケルさんとアッシュさんは出掛けていて、兄さんは調べ物があるとか言って部屋の中に閉じ篭もった。
私はお風呂に入って、ようやく気持ちがゆったりして……



(あ!純平君に電話しなきゃ!)



スマホを出して電話をかけようとしたものの……
なんだかかけ辛い……
どういう風に言えば良いのかわからないし、元々、私は話がうまい方じゃないし……
……うん、やっぱり、今回はメールにしておこう。



……でも、メールでもやっぱり書く事に迷った。
だって、私ったら勝手な勘違いをして、純平君に冷たい態度を取って……
野々村さんが話してくれなかったら、私は誤解したまま、きっともう純平君に会う事もなかったろうし……



(……あぁ、だめだ、だめだ!)



何度も何度も書き直し、そしてようやく書きあがったのはごくシンプルな謝罪のメール。



『純平君、本当にごめんなさい。m(__)m
私、勝手に勘違いして、その上、純平君に八つ当たりみたいな真似をしてしまって……反省してます。
こんな馬鹿な私ですが、またお店に遊びに行っても良いですか?』



どきどきしながら、送信。



「わっ!」

メールを送ってすぐに電話が鳴った。
表示されてるのは純平君の名前。
ま、まさか、怒ってるとかじゃないよね?
野々村さんがちゃんと話してくれたんだもん。
そう思いながらも、やっぱり出るのがちょっと怖い。
でも、でも、出なきゃおかしいよね。
今、メールを送信したばっかりだもん。



「は、はい……」


私は、恐る恐る電話を取った。